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ストーリー

100年の職人技とストリートカルチャーが融合した「蒟蒻麻絲(Konjac Linen)」の麻ニットTシャツ

「蒟蒻麻絲」のビジュアル

室町時代から続く麻織物の産地、滋賀県湖東地域。そこで長年受け継がれてきた、麻を活かす“コンニャク糊加工”の技術。この希少なコンニャク糊加工と麻糸をベースに、ストリートカルチャーやアスリート的感性を融合し、100年の職人技と次世代の創造性が交差する新ブランド「蒟蒻麻絲(コンニャクアサイト)」が誕生した。

ブランド名には、“コンニャク糊加工を施した麻糸”という素材そのものへの敬意が込められている。そして「糸」をあえて旧字体の「絲」で表現することで、職人の手仕事が織りなす伝統と、そこに新しい感性を重ねる現代的な姿勢を象徴している。

今回は、このプロジェクトに関わった職人・クリエイター・リーダーたちに、企画の背景から製品のこだわり、そしてこれからの展望までを伺った。

“なぜTシャツを?” —— きっかけは、素材の魅力を届けるため

プロジェクトリーダー・辻さんは語る。
「私たちは麻の糸を扱ってきましたが、その魅力がどうしても消費者に伝わりづらいと感じていました。シャツやワンピースなどの織物製品では、どうしてもデザインや縫製が前面に出る。でも、Tシャツなら形がシンプルなので“素材で勝負できる”と思ったんです。」

転機となったのは、滋賀県の公設機関にホールガーメント機が導入されたこと。それをきっかけに、これまで“織物用素材”として扱われてきた麻糸を、よりダイレクトにその良さが伝わるTシャツというプロダクトへと転用する試みがスタートしました。過去に麻で編み物をした実績はありつつも、今回は「コンニャク糊加工を施した麻糸を主役にする」こと、そして“素材で語る”というストレートな構成に徹したアイテムづくりが新たな挑戦となったのです。

“まさかここまで形になるとは” —— 最初は職人たちも半信半疑

プロジェクト初期、染色や縫製、加工を担当する職人たちも、まさかTシャツになるとは思っていなかったという。

「麻は硬くて切れやすい。ニットには向かない。でも、やってみようと動き出した辻さんの行動力はすごかった」とコンニャク糊加工の職人・古川さん。

その後、プロジェクトには若きクリエイター・水谷さんが加わり、方向性が大きく変化していくことになります。

生地を見ながら話し合う写真

ストリートの感性×伝統技術——若きクリエイターの提案が大きく方向を変えた

この流れに新たな息吹を吹き込んだのが、水谷真也さん。大手アパレルブランドでの経験に加え、1000年続く柿渋染の継承・発展にも尽力している若き職人です。

「コンニャク糊加工という極めてローカルな技術を、“ストリート”という自由で熱量のある感性で再構築したいと思った」と水谷さん。

スポーツや音楽、ダンスといった身体を通じた表現と、日本が誇るテキスタイル技術。その出会いが「蒟蒻麻絲」という名前に込められた、力強くもしなやかなコンセプトを生み出しました。

“こんにゃく芋で糊を作る”という、他にない加工法

本プロジェクトの中心的技術である「コンニャク糊加工」。これは、天然のこんにゃく芋から作られた糊を麻糸に手作業で塗布するという、極めて繊細な職人技だ。

「均一に薄く、でもしっかりと塗る。すべては指先の感覚。蒟蒻加工をすると麻の毛羽立ちが抑えられ、肌あたりが良くなる。そして光沢が出る。産地の中でもこの技術を担っているのはユニフルのみで、国内でも数社しかできない希少な加工です」

「糸のままではわからないこの効果を、Tシャツという形でダイレクトに体感できるのが今回の最大の魅力」

——古川さんは誇らしげに語る。

糸を加工している様子

スポーツ・アート・ファッションのクロスオーバー

「Tシャツには、温度で色が変わる特殊プリントを施しています。これはダンサーやスケーターの動きに反応し、体温の高まりとともに色が変わる」

「このギミックと蒟蒻麻糸の素材感、ストリート的な感性が合わさることで、“動くことで完成する衣服”になったんです」そう語る水谷さんの言葉には、衣服が単なるファッションではなく「身体表現のツール」になり得るという信念が込められている。

ドライヤーで生地に熱を加えている写真
ドライヤーで生地に熱を加えている写真、別の角度

新しい挑戦を続ける、産地の未来へ

完成したTシャツは、2024年2月にイタリア・ミラノで行われた「ミラノウニカ」でも高い評価を受けた。

生地は、コンニャク糊加工(ユニフル)→染色(澤染工)→生地仕上げ(大長)→縫製(ファイナル商事)→デザイン・手捺染(おおまえ)と、湖東繊維工業協同組合が誇る職人の手を丁寧に経て完成しています。今後はTシャツだけにとどまらず、パンツ、アウター、インナーなど、ラインナップを広げていく構想もあるという。

また、今回のように複数の職人・技術者・クリエイターが関わる「共創型」のものづくりの在り方は、地域の伝統産業の再構築にも新たな可能性を示した。

「かっこいい、着てみたいと思ってもらえることで、技術は未来に受け継がれていく。後継者不足の問題に対して、こうした“感性”をベースにしたアプローチは有効だと信じています」と、辻さんは語る。

感性を受け継ぐ、産地からの新しい風

「Starting anew with Mastery」── 熟練の技をもって、新たに始める。

蒟蒻麻絲は、「伝統を守る」のではなく、「伝統を生かし、進化させる」ブランド。

その背景には、地道な努力と実験、異なる分野の人材が集まって“素材”を主役にしたアイテムづくりを追求した3年間がある。

「着た瞬間に感じる涼しさと心地よさ、動いたときに変化する色。すべてが、技術と感性の結晶です」

そのTシャツを通じて、私たちは日本のものづくりが持つ本当の可能性に、肌で触れることができるだろう。

プロジェクトメンバーの集合写真

販売情報

Makuakeで「蒟蒻麻絲」Tシャツを先行販売

「蒟蒻麻絲」Tシャツを4月7日(月)8時から、Makuakeで先行販売いたします。
5月30日(金)まで実施。開発した無地のTシャツ、温度で色が変わる手捺染のTシャツに加え、Tシャツに自分で型染めができる体験プランもリターンとして用意しています。

プロジェクトページはこちら

大阪・関西万博にて出展・販売

2025年6月24日、大阪・関西万博に係る滋賀県主催イベント「滋賀魅力体験ウィーク~Discover Shiga, Go Biwako~」にて、蒟蒻麻絲Tシャツを出展・販売予定です。

Nowon(なうおん)にて出展・販売

滋賀県彦根市の「Nowon(なうおん)」にて、4月から蒟蒻麻絲のTシャツサンプルを展示中。6月末より販売を開始予定です。

NOWON(@NOWON_SG)